迂闊にも程がある

迂闊なおばさんの悲喜こもごも

思わずつぶやいた

 

ジムに行く。レッスン開始15分前に到着し、番号札の受付が始まっているにも関わらずヨガマットを車に忘れている事に気づき「すみませ~~~ん、忘れ物を車に取りに行ってきま~す」。ヨガマットを無事ピックアップし、上着と靴をロッカーに入れようとキーを回すも「ん?」開かない。何度やっても開かない。回りにいらしたマダム達もその不穏な様子に気づき「あら、なんでやろね」「フロントの人、呼ばはったらええわ」と心配してくださる。急いでフロントさんに事情説明。フロントさん「556」を手にして果敢に挑むも「あれ~~、開かないですね~」と美しい横顔を曇らせる。(え!?もしかして鍵の交換費用払わなあかんとか?)などと一瞬セコい妄想に怯えたが、なんせレッスン時間が迫っているのだ。「す、すみません、レッスン受けたいのでお願いしといてもいいかしら?」などと虫のいいことを言ってみる。横顔美人さんはさらに美しく微笑んで「いいですよ、鍵を預からせて頂いてよろしいですか?」「は、はい!もちろんです。お願いしま~す」

回りのマダム達も満足げに微笑んで「よかったわね~、やっぱりフロントの人呼んで」「は、はい!ありがとうございます」

 

レッスン終了。

あ~気持ち良かった、伸びたわぁ。これでもかっちゅ~ほど伸びましたわ。

と、悦に入っているとフロントさんが駆け寄ってくる。

まるでビーチフラッグを寸での差で掴み取ったライフセーバーのようにロッカーキーを掲げ、キラッキラの満面の笑みで。

「開きました!」

 

「ありがとうございます!」

回りから小さな歓声が上がる。

何か、うれしい…(笑)

 

当たり前だがあれほど頑なに閉ざされていたロッカーも開き、荷物を取り出して帰ろうと出口に向かう。

(あ、靴忘れてるやん…)

そう、ロッカーが開かなかったので履いてきた靴はロッカーの上に置いていたのだ。

美しい横顔のフロントさんが真正面からこちらを見ている。微妙な笑みを浮かべて。

私の周りの空気がトホホ色に染まる。

私の頬もマスクの下で少し染まる。

 

「あ、あほや」と呟いてまたロッカールームにすごすごと戻る。

で、もう一度フロント前を通った時、

「あのぉ、これ違いますか?」とフロントさんが小さなトレイに入った眼鏡を差し出した。

「は、はい!私のんです!いやっ、こんなもんまで忘れてましたか!!」

レッスンの際はいつも眼鏡を外してマットの横に置いている。その眼鏡は中遠というかどちらかというと老眼寄りだが掛けっぱなしでいけるタイプで、外していてもちょっとぼやけるけど純近視の人ほど困らないのだ。キー事件やら何やらで眼鏡の事なんざすっかり忘れていた。

 

あほや。