ひとつの壁を越えてみた。
昼休憩時の事。
持参したお弁当を食べ終えて構えていた。
「もうすぐあの人が来る」
私の職場の昼休憩は時間帯が細分化されていて、コアタイムは12:00~13:00で一番人数が多い。今日の私は13:00~14:00で私ひとりだった。ひとり休憩上等。スマホ見ながら食べたりお行儀悪い事しても、口あけて阿保面で寝ててもへっちゃらだ。
あの人は仕事に厳しい人(人に厳しいというべきか)だけど、よく忘れ物したりお茶目な一面もある。ただ、あの人とは休憩時間も合わないのであまり話したことがなかったし勝手に苦手なタイプと思っていた。
13:30 あの人(以下彼女)が部屋に入って来た。
「お疲れ様です」
部屋にふたりきり・・・。
私は先に食べ終えているので、彼女はひとりで食べ始める。
このまま彼女が食べている横でジッとしているのもいかがなものか(食事見守り介助じゃあるまいし、しかも彼女はナースなのだ)、などと思っていたらいきなり彼女がむせ始めた。この静かなる空間の圧に耐え切れなくなったのか?
「大丈夫ですかぁ?」
「だいじょ~ グワーッゴホゲホゲホゴホ」
だいじょ~ぶと言いかけて白目をむいている。
私は「いけます?だいじょうぶ?」と阿保の一つ覚えの様に繰り返す。
「は・・・は・・ず・か・・し~ゲホゴホゴホゲホ」
「あぁ、わかりますわかります、私も年のせいか最近よくむせるんですよ~」
彼女との距離感が一気に縮まった瞬間だった(笑)。
彼女のむせがようやく落ち着き、私はあの地獄の様な(経験した人ならわかるはず)むせを克服した彼女を讃えた。そして私たちは付き合い始めの恋人同士の様にポツリポツリと話し始めた。
当たり障りのない会話が続き、私はおもむろに質問してしまった。
「この仕事何歳までします?」
「う~ん、せやね~」
その後残されたわずかな時間だったが、何かいい感じの話が出来ちゃったんだな。
ちょっと前にあんなむせ事件が勃発していたにも関わらず(笑) (笑い事ちゃう)
彼女と私は同年代、私の方が2つ上。
「何歳まで(ここで)仕事をするか」という案件は私にとっては永遠のテーマなくらい悩ましい問題なのだ。人とダイレクトに関わる仕事ゆえに体力よりも心が疲弊していく。特に私の様な人と関わるのが下手くそな人間ならなおさらの事。(じゃ、何故この業界に入職したのかはいずれまた書けたら)
彼女は私の質問にこう答えた。
「う~ん、せやね~、いけるトコまで」
おぉ
私と同じ答えやん。
じゃ、聞くなよっちゅ~話。