三日ぶりに職場に行った。
朝、同僚が開口一番、
「あ、切ったんですね、めっちゃ短かぁい、スッキリ!」
と言ったので、一瞬何事かと思ったが、あぁ、そうそう私は髪を切ったのだった。
月曜日に11cut(イレブンカット)という全国チェーンの低料金の美容院で。関西圏では理美容院の定休日は月曜日が多いが、11cutは年中無休である。
前回から約一か月後の二度目の11cut、10分ほど待って席に案内された。前回は背の高いシュッとしたスタイリストさんだったが、今回は小柄でストリート系な感じ(アラサーくらい?)の男性が担当してくれた。
「どうされますか?」
「全体に2センチくらい短くして、襟足は刈り上げ一歩手前位でお願いします」
ストリート系さんは軽やかなハサミさばきで手際よく切っていく。寡黙に仕事を進める人は好きだ、特に美容院では。もう少しでフィニッシュに近づくかというところで、
「前はいつ来られたんでしたっけ?」
「先月の半ばくらいかな?」
「あ、そうですか。それにしては結構な量を切ったんで」
「あぁ、多いでしょぉ私。よく言われるわ」
「何か運動してます?」
(へ?)
「あ、フィットネスクラブ行ってます」
「あ、そうなんですね」
「え? 何で?」
「いや、運動している人は新陳代謝がいいから髪が伸びるのも早いらしいです」
「え~~~っ、そうなんですか!?知らんかったわぁ」
一瞬、ほんまかいな?と思ったが、ストリート系さんが鏡越しに真っすぐな目をしておっしゃっているのだから、そうなんだろう位にしかその時は思ってなかったけど、後で調べてみたら、どうも本当の事らしい(疑ってごめんなさい)。
私が髪が伸びるのが早いほどに運動しているかというと少しアレなんだけど、こんなおばちゃんに「新陳代謝がいいから」と言ってくれて、すっご~~~く嬉しいやん♪ 単なる例え話だとしても。「髪の毛が伸びるのが早くなるほど運動している新陳代謝が良い人の様に見えた」という事がもう、嬉しいったらありゃしない。例えセールストークだとしても、いや、そんなにへりくだらなくとも素直に受け取ろうじゃないか、言霊を。
もう、ええか。
途中でアシスタントの若い女性が足元の髪をそうじしに来てくれた。
ふと、見ると切ってから一か月しか経っていない人間の毛量とは思えない程の髪が掃き集められている。ストリート系さんに褒めてもらった様な気になっていたが、なんか恥ずかしい。すみません、こんなに髪の毛とり散らかしてみたいな気になってくる。
この凄まじい毛量は私が多毛である事に加えて、剛毛でくせ毛のためのかさ増し効果のせいもある。
私の髪質は父親譲りだ。私は顔も体型も父親似だが、何が似ているって圧倒的に髪質なのである。父は若い頃は「ダン・池田」さながらの天然パンチでずっと同じ髪型だった。いや、多毛&縮毛ゆえにあの髪型しかできなかったと言うべきか。ダン・池田氏の様な髭は生やしてなかったけど(公務員だったので)。
今ではあの天然パンチも鳴りを潜め、〇ゲてしまわれているので、ようやく落ち着きを取り戻している(本人は髪質などまったく意に介していない様だが)。
とは言うものの今ではこの髪質で良かったと思う事もある。ケチな私がウイッグを買わなくてもいいかも?という事(高価ですからね)、迂闊な私が特に部分ウイッグなどの繊細なアイテムを管理出来るはずもないと思うからだ。
いずれにしろ、今まで通りにちゃんと運動しよう。
せっかく新陳代謝良さそうと思われたんだから(もう、よろし)。
ダン池田(ダン いけだ、本名・池田 啓助、1935年4月11日- 2007年12月25日)は、日本のバンドマスター。ラテンパーカッション奏者であり、指揮者として活躍。