迂闊にも程がある

迂闊なおばさんの悲喜こもごも

父 また こける (また長文です)

 

父が また こけた。

 

実は昨日、午後5時半頃ホームから連絡があった。

父が左手を怪我していてこちらで処置させて頂きましたという内容。

何故けがをしたのかを聞くと、父が頑なに「大丈夫」としか言わないらしかった。

前回の事もあるので「病院に行った方がいい感じですか?」と聞いたら、「そこまでではないから大丈夫です」との返事だった。

父は耳が遠く電話での会話は無理なので、「気をつけてね。何かあったらすぐに職員さんに言ってね」的な内容をラインで送る。

 

そこから連絡がなかったので安心していたら、今日職場の昼休憩中の午前11時半頃、ホームから電話。左手の甲の表皮剥離が思いのほかひどくて病院に行った方がいいかも知れないとの事。

今日はひとり欠員が出ていて持ち場を抜けられそうにないし、今から行っても職場からは車で40分程かかるし午前診は間に合わない。とりあえず、仕事が終わってから午後診で診てもらう旨を伝える。

仕事は「帰りの送迎業務を代わるので早退していい」との事となり、午後4時前父の元へ走る。

 

到着して施設長さんに話を聞くと父は「転んでいない」と言っているらしい。

外の空は黒い雲が立ち込めていて今にも激しい雨が降ってきそう。

とにかく父を車に乗せて車内でゆっくりと話を聞く。

部屋でよろけてベッドに手をつこうとしたら、手が滑ってマットレスの縁で手の甲をズルッと擦ってしまったらしい。

 

私の勤め先の系列病院で診てもらう(実は外科の午後診はなかったが緊急で診てくれた。もちろん私が関係者という事は病院は知らない)。

父の傷は想像以上に深くて範囲が広く破れた様になっていて、縫合する事となった。先生が「皮膚がとても薄く弱くなっているので縫ってもまた裂けるかも知れません」とおっしゃる。縫う間、私は部屋から出ろと言われたので見ていないけど、すごく痛かったと思う。

消毒や処置をしなければならないので明日も受診しなければならない。職場に電話して今日の事を報告して明日休まなければならない事を伝える。「何とかするから大丈夫」と言ってくれたけど、明日は祝日の土曜日でただでさえ人手が薄いので恐縮してしまう。

 

転倒リスクが高い人なのでホームでは必ず歩行介助も付いてくださっているが、自室内まではどうにもならないもの。本人も気を付けてはいるだろうけど、脳梗塞の麻痺や筋力の衰えなどで避けられなかったんだと思う。誰だって好きで転ぶ人はいないもの(過去に心配してもらいたいがためにワザとよろけたりする利用者さんはいらした)。

 

そんな事より(そんな事も大事だけど)、なぜ転んでいないと言ったのか。

本人のプライドもあるだろうし、多分、転倒の度に私に連絡が行くので心配と迷惑をかけたくない一心で「転んでいない」と意地を張ったのだろう。ついこの間も転んで病院に連れていって貰ったところなのに、また迷惑がかかると思ったのだろう。その気持ちを思うと込み上げてくるものがあるけど、あんなにケガをしているのだからどうせ連絡は来るのにね、私に。父が本当の事を言わなければホームの職員さんも対応に苦慮するし、こういう施設はどんな事でも記録に残さなければならないし、特に転倒やケガなら尚の事。

 

職員さんにも私にも迷惑をかけたくないと思う気持ちには寄り添いたいけど、どうせ迷惑はかけるんだから、かけない人なんていないんだから、いっそのこと気持ち良く迷惑をかけてくれ~~~~。

いや、わかるねんよ、うん。私だって職場のシフトに穴をあけてしまう事は非常に気を遣う。実際、迷惑をかけるわけだから。

でも、私たちの場合はどこかで挽回というか穴埋めできるチャンスがある、仕事だから。

 

父の場合は…自分の身の回りの事もままならず、人の手を借りてばかりで…どの様にお返ししたらいいのか…と、気ぃ遣いぃの父なら思っているだろう。

「してもらってばっかりで返すもん何もない」「ポンコツの厄介者」

これは過去に実際に父が言った言葉だ。

「そんなん言うてもしゃーないやん、どうせなら気持ちよくしてもらってよ」と答えた様に記憶する。

どの答えが正解なのかはわからない。多分、正解なんてないんだろう。

気ぃ遣いぃのかんしょ病みの父。何をどう言ったとて気は遣うだろう。

私だって言ってやりたい!

「私ってそんなに気を遣わなあかん娘なん?恩返しもさせてくれへんわけ?それはそれで傷つくわ」って!

だからって93歳の父の胸元を揺さぶって泣いて訴えるワケにもいかないし、どないせぇ~っちゅ~ねん。

 

ただ、今日は嬉しい事あった。

病院横の処方箋薬局が駐車場からちょっと離れていて、父を車に残して私一人で薬局に向かった。もうすっかり日は落ちて雨が降っていたけど濡れていった。薬局であまりにも長く待たされ、父の事が心配になって一旦戻ろうとした時、晴雨兼用の日傘がバッグに入ってるのに気が付いてその傘をさして車に戻った。

 

「待ってる人いっぱいいてはって、もう少しかかるわ。

 絶対に動かないでここで待っててな」(幼児か)

父が言った。

「傘持ってたんか、濡れていったから心配したで」

もう!ずるいわ 

またキラーワードやん!

 

返すもん何もないて言うてたけど、こんな言葉だけで何もかも帳消しやわ。